ここでは、「移動に伴う消費カロリー」から、クルマ利用と「健康」について考えます。
そのために、一時間のクルマ利用を電車の利用に代えることを考えます。
そして、「クルマ」と「電車」のそれぞれでの移動での消費カロリーを計算し、比較します。
今回のアンケート調査では、計算では、以下のような仮定をしています。
① 15km離れた地点への往復の移動を考える。
② 「クルマ」は 時速30km、「電車」は 時速40kmで移動する。
③ 「電車」の場合、駅までの徒歩や乗り換えの時間として、片道20分かかる。
④ 移動中の各行動の一分あたりの消費カロリーは、以下の値を用いる
「クルマ」の運転:1.7(kcal/分)
「電車」に乗る:2.2(kcal/分)
徒歩:3.3(kcal/分)
(この数値は、体重 60 kgの方の場合の消費カロリーです。)
この仮定の下では、
・「クルマ」では、往復で30 kmの距離を一時間で移動し、その間1.7(kcal/分)× 60(分)= 102(kcal)、
・「電車」では、往復約30kmの距離を約40分で移動し、2.2(kcal/分)× 40(分)= 88(kcal)、
また、「電車」では、「電車」に乗る以外の時間を徒歩で、往復約40分で、3.3(kcal/分)× 40(分)= 132(kcal)
を消費することになります。
この計算から、「クルマ」で1時間の移動をすると102(kcal)、「電車」では、合計80分かかり220(kcal)を消費する。
つまり、「クルマ」ではなく「電車」を使えば、消費カロリーは2倍以上になるわけです。
実際、通勤手段と「肥満の割合」を比べたところ、
「クルマ」では 28%、「バス」や「鉄道」では19%、「徒歩」や「自転車」では20%
(ここでは、BMIが25以上の人を肥満としています。)
というように、「クルマ」で通勤している人の肥満の割合は、
クルマ以外の公共交通や徒歩・自転車で通勤している人の肥満の割合より4~5割程度も高い、というデータも報告されています。
最後に、クルマ移動と電車移動の消費カロリーの差(220-102=118kcal)をジョギングによって補うことを考えます。
まず、ジョギングによる一分あたりの消費カロリーは以下の値です。
ジョギング(120km/分) 7.3(kcal/分)
(この数値は、体重 60 kgの方の場合の消費カロリーです。)
これを用いると、118(kcal) ÷ 7.3(kcal/分)= 16.16(分)
つまり、例で挙げた電車移動と同じカロリーを消費するためには、クルマ移動の他に約16分間のジョギングが必要なのです。
[参考文献]
第5次改訂日本人の栄養所要量(1994)
個人の通勤交通行動が健康状態に与える影響に関する研究(2006);
村田香織・室町泰徳,土木計画学研究・論文集23,pp.497-504