少々大袈裟に聞こえるかもしれませんが、「モビリティ」は、私達がサルとしての「ヒト」から人格を携えた「人間」へと生まれ変わるために必要不可欠なもの。モビリティがあるからこそ様々な「交流」が生まれ、その交流によってはじめてヒトはサル以上の(人の間と書く)「人間」となるわけです。
そしてそのモビリティは、良質であればあるほど、より豊かな交流が可能となり、一人一人の人間も、様々な共同体・コミュニティも、より文化的、文明的な存在へと高度化していくことになります。一方で、モビリティが乏しければ、自由な交流が抑制され、文化・文明の発展が阻害されてしまいます。だからこそ、あらゆる文明都市は、太古の昔から、都市内の交通を保証する「道」を網の目の様に張り巡らせ、そんな都市と都市を結び付けるための「道」を縦横につくり上げてきたのです。
日本モビリティ・マネジメント会議(JCOMM)は、まさにこうした認識の下、わたしたちの社会の発展や繁栄を支える「モビリティ」そのものを、わたしたち自身の力で「マネジメント」していく――つまり、あらゆる側面を俯瞰的に眺めながら、じっくりと、粘り強く、少しずつ「改善」していく――その「改善の仕方」を様々な角度から考え、話し合う場として設置されたものです。
そんな「改善」を考えるにあたっての最大のコツは、その「歩幅」の大きさはさておき、着実に少しずつ、一歩一歩、進むべき方向に進んでいく、という姿勢。それさえあれば、モーダルシフトにせよ地域公共交通の活性化や改善にせよ、様々な漸次的改善が進められ、遅かれ早かれ誰もが羨むような良質なモビリティが形作られ、その街や地域がより良質なものへと生まれ変わっていくこととなるでしょう。
JCOMMは、そんな姿勢でモビリティの問題に向き合わんとする様々な立場の方々が、互いに話し合い、経験や認識を共有し、それらを各々の現場での役立てていくための場としてつくられたもの。是非ともこのJCOMMが皆様の実践により効果的に貢献できますよう、様々な形で引き続きご支援、ご協力賜りますこと、心よりお願い申し上げます。
平成30年3月1日
日本モビリティ・マネジメント会議
代表理事 藤井 聡
(京都大学大学院工学研究科 教授)