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〈ニッポンのMM〉九州地域における地域公共交通へのICT活用の取組み〈第34回〉

九州産業大学 理工学部 情報科学科 准教授 稲永健太郎

国内の公共交通を取り巻く厳しい状況の中、その状況を打破すべくモビリティ・マネジメントに関する様々な施策が実践されています。九州産業大学理工学部情報科学科の稲永研究室を母体とする地域公共交通運行管理支援グループは、2013 (平成25)年の福岡県遠賀郡芦屋町のコミュニティバス「芦屋タウンバス」を題材としたIT人材育成教育の連携を皮切りに、これまで福岡県を中心に九州地域の16の市区町のコミュニティバスや渡船、乗合タクシーに関して、公共交通の利用促進に向けた研究・教育の連携を進めてきました。この連携活動に対し、国土交通省九州運輸局や地元福岡県、交通事業者をはじめとする民間企業の皆様にご協力・ご支援いただいております。
 

このグループの活動は主に2つの柱からなり、1つは各種調査用タブレット向けアプリを使った現状把握のための運行状況調査、もう1つの柱は公共交通基盤データの整備支援です。前者の調査活動では、地域公共交通の現状改善および将来デザインにおいて重要な判断材料の1つとなる、当該交通の利用実態を把握するため、詳細な乗降者数と利用者のニーズ把握等を目的とした車内アンケート調査を実施し、収集データを集計分析するための独自ICTシステムを開発しています。昨年度 (2018年度)には、福岡県内6市町のコミュニティバスについて調査を実施し、一部の調査データについては地域公共交通会議の根拠データとして使われております(図1参照)。特に、昨年8月1日から運行開始となった古賀市「コガバス」については、運行当初から2種の調査を継続して実施しており、その調査データを活用した改善の取組みが進められています。

 
後者の活動では、GTFS-JP(標準的なバス情報フォーマット)データの作成を支援し、国内主要の経路検索(乗換案内)サービスに使われるとともに、前述の独自ICTシステムの基礎データとして活用しています。2018年度には、福岡県内8市町のコミュニティバス・渡船のデータ整備(新規作成、更新)を支援し(図2参照)、そのデータ整備による利用促進効果も一部の事例では見受けられています。2019 (令和元)年度には、福岡県北九州市八幡東区の乗り合いタクシーや宮崎県串間市のコミュニティバスのデータ整備において、当グループが開発した位置情報取得アプリが使用され、その貢献の幅を広げつつあります。
 
今後も九州地域を中心に地域公共交通におけるさまざまな状況変化に対応しつつ、ICT

 

で地域公共交通に貢献していきたいと考えています。

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