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〈第33回〉高齢運転者心理に着目したモビリティ・マネジメントの展開 〜動機付け冊子紹介〜

国土交通省北海道運輸局交通政策部 計画調整官樋口康弘

 運転を続けて交通事故のリスクをとるか、運転を辞めて不便な生活をとるか、加齢に伴う身体機能の下はリスクと不便の双方を増大させる要因となります。高齢者が無理な運転に頼らずとも自由な外出ができる社会をつくるためには、高齢運転者に見られる2つの心理を理解する必要があるといえます。

 ひとつは【運転への過信】です。北海道運輸局が平成29年度に釧路市で実施した調査では、高齢者の半数以上が「運転に自がある」と回答しました。特に80歳以上ではその割合は60%を超え、加齢に従って自信が増すという結果になっています。これは他の機関が実施した調査でも同様の結果となっており、これまで事故に遭わなかったから、免許更新検査をクリアしたから、という事実が高齢者に【過信】を与えてしまっているのではないかと言われています【過信】に従うのではなく、自分の技能に見合ったスタイルを選択していくためには、運転技術を適切に測定する機会創出が力ギといえます。

 もうひとつは【移動手段の喪失不安】です。一部の都市圏を除き、多くの地方部では公共交通が衰退しています。そうした中での免許返納は移動手段の喪失に直結してしまいます。事実、平成29年度から平成30年度にかけての免許返納率は、東京都の81%に比べて北海道では42%と非常に低い状況です。こうした中で重要といえるのは家族による送迎ですが、同居家族がいたとしても必ずしも自由に送迎を頼めるわけではありません。前述の調査では、高齢者の半数近くが「送迎を頼みづらい」と回答しています。一方で、高齢者本人が送迎を頼みづらそうにしていると察している同居家族は4%未満でした。この認識の違いは、送迎を頼みたくても頼めない、クルマを手放すことは移動手段の喪失だ、という心理を生み出しているといえます。

 これらを踏まえ、北海道運輸局ではクルマ以外の選択肢を考えるための一助として2つの動機付け冊子を作りました。ひとつは「高齢者本人向けの動機付け冊子」です。運転がもつ様々なリスク、公共交通を選ぶメリットを記述しています。もうひとつは「同居家族向けの動機付け冊子」です。高齢者の移動手段を家族ぐるみで考える機会創出に向けたメッセージ等を記述しています。高齢者が無理な運転に頼らずとも自由な外出ができる社会をつくるため、北海道運輸局ではこれらの冊子を活用しながらモビリティ・マネジメントの活動を今後も継続していきます。

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